海外2022年ベスト ビジネス書【エコノミスト誌、FT紙が選ぶ】

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この記事では『エコノミスト』誌と『フィナンシャル・タイムズ』紙が2022年のベストとして挙げたビジネス書・経済書を紹介します。

世界ではどんなビジネス書が出版されているんだろう……

日本の本だって読み切れないのに、洋書のことを知ったって意味ないんじゃない?

mano

どんなテーマの本が評価されているかを通じて、海外の問題意識が見えてきます。

メリット例
  • 海外の問題意識に対するアンテナを張れるようになる
  • いずれ翻訳版が出版される際に向けた心構えができる
  • 単純に、面白本の情報が手に入る!

この記事では、次のような問いに答えていきます。

  • どんな本がベストに選ばれた?
  • 専門家が選ぶベスト本でありつつ、ベストセラーにもなった本は何?
  • ベスト本と同じようなテーマを扱った日本語本ってある?

なお、この記事はあくまで『エコノミスト』と『フィナンシャル・タイムズ』が選出した書籍をもとにしてますので、世界全体を表すものではありません。

目次

『エコノミスト』誌と『フィナンシャル・タイムズ』紙

『エコノミスト』も『フィナンシャル・タイムズ』も、言わずと知れた由緒ある経済誌/紙です。

前者は1843年、後者は1888年に創刊。現役の雑誌・新聞の内、世界最古の部類でしょう。

双方ともイギリス発祥ですが、国際展開しています。

  • 『エコノミスト』:世界5大陸に21拠点。現在のメイン市場は北米。
  • 『フィナンシャル・タイムズ』:40か国以上にジャーナリストを配置。日経新聞社の傘下。

そんな『エコノミスト』と『フィナンシャル・タイムズ』ですが、両媒体とも、毎年ベストブックを発表しています。

mano

『フィナンシャル・タイムズ』のベストブック選考には現在、あのマッキンゼーも関わっています。

メディアやコンサルの立場で俯瞰的に経済・金融・ビジネスを見ているプロが選んだ本ならば、中身の詰まった本が見込めます。

『エコノミスト』と『フィナンシャル・タイムズ』の面々は文章のプロでもあるので、読み物としての面白さも期待できます。

情報の濃さと面白さの両取りですね!

ちなみに、ダイヤモンド社のベスト経済書・ビジネス書大賞2021の上位3冊中2冊は翻訳書で、ともに『エコノミスト』や『フィナンシャル・タイムズ』でブック・オブ・ザ・イヤーに選ばれています。

ベスト経済書・ビジネス書大賞2021第1位

『監視資本主義: 人類の未来を賭けた闘い』:2019年ビジネスブック・オブ・ザ・イヤー(『フィナンシャル・タイムズ』)

ベスト経済書・ビジネス書大賞2021第2位

『資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来』:2019年ブック・オブ・ザ・イヤー(『エコノミスト』)

この記事で扱うベストブックは以下で選出された書籍です。

2022年ベスト経済書・ビジネス書

『エコノミスト』はThe Economist’s best books of 2022で8冊、『フィナンシャル・タイムズ』はFT Business Book of the Yearで15冊の本をベスト本として選出しました(候補作含む)。

片方でしか選出されていない本も勿論ありますが、両者の意見が合致した本もあります。

mano

今年は6冊が、『エコノミスト』『フィナンシャル・タイムズ』の両方で選出されました!

タイトル著者名テーマ
Butler to the WorldOliver Bulloughイギリスの不法行為援助
Chip WarChris Miller半導体産業
Dead in the WaterMatthew Campbell、Kit Chellel海運業界のスキャンダル
Power FailureWilliam CohanGEの盛衰
Slouching Towards UtopiaJ. Bradford DeLong20世紀の経済史
The Power LawSebastian Mallabyベンチャーキャピタル史

1冊ずつ紹介します。

『Butler to the World』イギリスの不法行為援助

イギリスが今日にいたるまで、どのように資金洗浄などの違法行為を手助けしてきたかを描く本。

イギリスは世界の悪党のバトラー(執事)だと述べます。

オリガルヒ、悪徳政治家、ギャングスタ―。英国がどのようにして世界の極悪人の肘掛けととなったかを、『Butler to the World』は明らかにする。英国はフェアプレーの精神と法の支配を誇りとする国だ。しかし、世界の反腐敗に対する努力を、ここまで妨げる国もなかなか無い。

出典:The Financial Times. (2022). Butler to the World by Oliver Bullough. Financial Times. (筆者訳)

イギリスは紳士の国だと思ってたのに……

mano

世界的にも厳しい腐敗防止法(UKBA)のあるイギリスで、マネーロンダリングが横行しているとは驚きでした。

実は少し調べるだけで、こんな記事も出てきます。

mano

私のアンテナ不足でした。

【面白そうポイント】

  • なぜイギリスは悪人に手を貸すようになったのか
  • 反腐敗の機運が高まっている現在でも、なぜそれが続いているのか
  • 今後解消の見通しはあるのか

格差拡大や透明性が話題に上る今日、富豪や犯罪者がお金の誤魔化すマネロンや脱税は耳目を集めるトピックでしょう。

イギリスのような大国が悪行の温床になっているとは極めてショッキングです。その衝撃ゆえに食指が伸びます。


『Chip War』半導体の歴史と覇権争い

『Chip War』は、『エコノミスト』と『フィナンシャル・タイムズ』の双方が選んだだけでなく、『フィナンシャル・タイムズ』ではビジネスブック・オブ・ザ・イヤーの大賞にも輝きました。

今日、軍事、経済、地政学の力はコンピューターチップの基盤の上に成り立っている。事実上すべてが——ミサイルから電子レンジまで——半導体で動いている。… 政治、経済、テクノロジーの現状が腑に落ちるようになるには、まずは半導体が果たす重要な役割の理解から始めなければならないことを『Chip War』は示してくれる。

出典:Simon & Schuster. (2022). Chip War | Book by Chris Miller. Simon & Schuster. (筆者訳)

国際歴史学者が半導体産業の歴史を紐解く一冊。

日々見聞きする情報では、車や家電において半導体が果たす役割やサプライチェーンに関する話題が多く、安全保障の観点からの語りは少ないような印象があります。

『Chip War』は、より包括的な観点で半導体産業の実態を示してくれるようで、期待大です。

【面白そうポイント】

  • 半導体が、経済だけではなく、いかに軍事・安全保障にも影響を及ぼしているか
  • なぜアメリカは半導体産業の最先端ではなくなってしまったのか
  • アメリカで2022年に成立したCHIPS法(半導体の国内生産を支援)以降も、韓国や台湾への依存は継続するのか

半導体は日本でもホットなトピックです。『週刊東洋経済』でも、ここ3年は毎年半導体の特集が組まれています。

半導体産業を俯瞰する本は、日本でも『ビジネス教養としての半導体』(著:高乗正行)『2030 半導体の地政学 戦略物資を支配するのは誰か』(著:太田泰彦)が出版されています。


日本でも世界でも大注目のトピックと言えるでしょう。


『Dead in the Water』ソマリア海賊から始まる海運スキャンダル

『Dead in the Water』は、Brillante号のハイジャック事件とその余波を通じて、国際海運の腐敗した内幕を暴く衝撃作だ。生存者の生の声を通じ … ブルームバーグの記者Matthew CampbellとKit Chellelは、史上最も大胆な金融詐欺の裏にある驚愕の真実を解明していく。

出典:Matthew Campbell. (2022). Dead in the Water — Matthew Campbell. Matthew Campbell.(筆者訳)

石油タンカーBrillante Virtuoso号の事件をご存じでしょうか。

2011年7月6日、イエメン南のアデン湾を航行中のBrillante Virtuoso号で火災が発生し、乗組員は全26名は棄船。

ソマリア海賊によるロケット攻撃による被害を受けたとの報でした。

しかし、海事鑑定人のデイビッド・モケット氏が保険対応のために調査に入ると、不審な点が浮かび上がってきます。

真実は何なのか。それがすぐに明るみにでることはありませんでした。

事件から2週間後の2011年7月20日、車両に仕掛けられた爆弾で、デイビット氏は殺害されてしまうのです。

えーと、これビジネス書ですよね?

mano

はい。本書の副題にはMurder and Fraud in the World’s Most Secretive Industryというのがあります。直訳すると、「世界で最も秘密主義な産業での殺人と詐欺」。なんとこれは、詐欺事件だったんです。

え!

mano

しかも「国際海運の腐敗した内幕を暴く」とある通り、業界の闇にも切り込んでいる点が評価されています。

どこの社会派サスペンス映画ですか……

【面白そうポイント】

  • 事件の顛末
  • 海運業界の闇とは
  • その闇を生みだし、生きながらえさせた構造的問題は何か

海運なしに、グローバルな社会は成立しえません。

グローバリゼーションの縁の下の力持ちとも言える業界で、こんなスキャンダラスなことが起きていたとは驚きでした。

ハリウッドで映画化必至でしょう。


『Power Failure』GEの栄枯盛衰

130年に及ぶゼネラル・エレクトリック(GE)の企業史

本書は、かつて「人生に良いものを送り出す」と謳ったGEを見事に再評価した。金融ジャーナリストWilliam D. Cohan曰く、GEの想像を絶する盛衰の物語は、単なる教訓にとどまらない。アメリカ資本主義の理解を深めてくれるプリズムでもある。

出典:Penguin Random House. (2022). Power Failure by William D. Cohan. Penguin Random House.(筆者訳)

GEといえば、言わずと知れたアメリカを代表する企業です。

ダウ平均構成銘柄に110年間も入っていました。しかし近年は業績が悪化し、2018年にはダウ平均から外れてしまいました。

2018年までの110年って、『Slouching Towards Utopia』(20世紀の経済史を描く2022年ベスト本)が20世紀として語る期間と重なりますね。

mano

アメリカの20世紀を象徴する企業とも言えるのでしょう。

ひとつの企業のケーススタディではなく、GEを主人公としたアメリカ史として読んでも面白そうです。

『エコノミスト』の寸評が気になりました。

GEの物語は、優秀な人材が、ビジネスの成功にとっていかに重要かを明らかにするとともに、その優秀さが深刻な脆さにもなることをあらわにする。

出典:The Economist Newspaper. (2022). These are The Economist’s best books of 2022. The Economist.(筆者訳)
mano

優秀さがGEではどう裏目に出たのでしょう?

【面白そうポイント】

  • GEがどのようにアメリカを体現していたか
  • GE業績悪化のきっかけは何だったのか、それは避けえたのか
  • 優秀な人材が抱えるリスクとは

GE本といえば、まだ『GE帝国盛衰史――「最強企業」だった組織はどこで間違えたのか』が2022年に発売されたばかり(原書『Lights Out』は2020年)。

読み比べたいところです。

『GE帝国盛衰史――「最強企業」だった組織はどこで間違えたのか』を経営学者の入山章栄教授が解説している番組はこちら。

『Slouching Towards Utopia』20世紀の豊かさは、なぜユートピアを生み出せなかったか

20世紀の経済史。

経済学者Brad DeLongの『Slouching Towards Utopia』が語るのは、物質的豊かさの未曽有の爆発がどのように起こり、どのように世界を変え、そしてなぜユートピア行きに失敗したかだ。

出典:Hachette Book Group. (2022). Slouching Towards Utopia by J. Bradford DeLong. Basic Books.(筆者訳)

20世紀の経済の歴史……。切り口にもうひと捻りないんですかね? 「●●から見る20世紀経済史」みたいな。

mano

あえて言うなら1870-2010年という時代の区切り方でしょうか。
教科書にもなりそうな極めてシンプルかつベーシックなテーマで、ここまで絶賛される。凄まじいクオリティだからこそだと思います。

売り文句に何か特別ユニークな捻った切り口が謳われているわけではないので、正面から20世紀の経済史という大テーマに挑んだのでしょう。

それでここまで評価されているのだから、骨太な良書なこと必至。

20世紀を学ぶ上での基本書になるかもしれません。

なお本書では20世紀を、1870-2010年の区分としているとのことです。

【面白そうポイント】

  • なぜ1870-2010年という「長い20世紀」の区切り方をしたのか
  • なぜ富が世界中に行き渡らなかったのか
  • 2010年までと今の時代では、一体なにが変わったのか

人類の無力さを改めて突きつけた新型コロナウィルス。

成長をけん引していたIT企業の失速。

グローバルに取り組まないと対処できない脱炭素という特大イシュー。

不確実かつ難易度の高い未来に向かうにあたり、改めて歴史を振り返るタイミングなのかもしれません。


『The Power Law』ベンチャーキャピタルの歴史と社会的影響

ベンチャーキャピタル史。

Sebastian Mallabyは『The Power Law』で、ベンチャーキャピタル史上最も著名なベンチャーキャピタリスト陣にかつてないほど近づき、シリコンバレー、ひいては世界のテック産業の歴史を紐解いた。それもストーリーテリングと分析を見事に融合させた形で。

出典:Penguin Random House. (2022). The Power Law by Sebastian Mallaby. Penguin Random House.(筆者訳)

1950年代の綿産業から、シリコンバレー、そしてロンドンや中国などアメリカ国外でも活況となる現在に至るまで、ベンチャーキャピタルが世界に起こしてきた変革を描いているとのこと。

Googleが上場してから、もう20年近く経ち、テック産業の陰りも指摘される今日。ベンチャーキャピタル史が、未だに待たれていたとは驚きでした。ハーバード・ビジネス・スクールの講義をもとにした『ベンチャーキャピタル全史』も出版されてるのですが。

mano

日本だけでなく世界的に見ても、一部界隈を除いては馴染みの薄い分野なのかもしれません。

【面白そうポイント】

  • ベンチャーキャピタルが社会にもたらした変化とは
  • ベンチャーキャピタリストの世界の見方は、他の業界とどう違うのか
  • 著名なベンチャーキャピタリストの視点は、一般的なベンチャーキャピタルのイメージと何か違うのか

ベンチャーキャピタルが活躍する領域は、なにもテック業界に限りません。

例えば、脱炭素のためにさらなるイノベーションが求められる中、ベンチャーキャピタルが果たす役割は大きいです。実際、脱炭素技術に対するベンチャーキャピタル投資も増えています。

mano

今後も要注目の業界です!


ベンチャーキャピタリストに迫った書籍としては、『ベンチャー・キャピタリスト──世界を動かす最強の「キングメーカー」たち』もありますね。

語られる世界観の共通点・相違点を比べてみるのも面白そうです。

ベスト本の傾向

2022年、『エコノミスト』と『フィナンシャル・タイムズ』がベストブックとして選んだビジネス書・経済書は次の17冊でした。

タイトル著者名テーマ
Butler to the WorldOliver Bulloughイギリスの不法行為援助
Chip WarChris Miller半導体産業
Dead in the WaterMatthew Campbell、Kit Chellel海運業界のスキャンダル
DirectKathryn Judge仲介業者の役割
DisorderHelen Thompson21世紀史
Flying BlindPeter Robisonボーイング737MAX
For ProfitWilliam Magnuson企業という存在の歴史
Influence EmpireLulu Chenテンセントの全体像
Money MenDan McCrumWirecardの不祥事
Nomad CenturyGale Vince環境難民
Power FailureWilliam CohanGEの盛衰
Slouching Towards UtopiaJ. Bradford DeLong20世紀の経済史
TalentDaniel Gross、Tyler Cowen優秀な人材の見つけ方
The Long ShotKate Bingham、Tim Hames英国コロナワクチン
The Power LawSebastian Mallabyベンチャーキャピタル史
The Price of TimeEdward Chancellor金利の歴史と機能
The Rise and Fall of the Neoliberal OrderGary Gerstleネオリベラルの歴史

この17冊から、どのような傾向が見えるでしょうか?

歴史で語る

2022年に限った話ではないでしょうが、歴史的視点を持って語る本が多数です。

17冊中10冊は全体史・業界史・企業史を語っていると言えるかと思います。

歴史視点を持った本の割合とその内訳

なぜ歴史的視点のある本が評価されているでしょう?

理由は色々あると思います。

例えば、歴史をしっかりと記述するには相応のリサーチが必要なので、未来について思いつきを書き散らかした本に比べ、重厚感が自ずと違ってくるところはあるかもしれません。

mano

個人的には、歴史のストーリーに没入しやすいところが好みです。

そんな中、『Nomad Century』は注目です。


なぜ注目なの?

mano

17冊の内、未来に著しく重きを置いた恐らく唯一の本だからです。

テーマは環境難民。地球温暖化により、住む場所・国を移さざるを得ない人々。

過去の出来事をベースに世界を切り取っている書籍が大半の中、未来を描いてベストに選ばれる。

並大抵の説得力ではないのでしょう。

縁の下の業界

特定の産業に焦点を当てているのは次の6冊です。

タイトル著者名産業
Butler to the WorldOliver Bullough金融
Chip WarChris Miller半導体
Dead in the WaterMatthew Campbell、Kit Chellel海運
DirectKathryn Judge仲介
The Power LawSebastian Mallabyベンチャーキャピタル
The Price of TimeEdward Chancellor金融

なにか共通点は?

mano

どれも縁の下の産業と言えるのではないでしょうか。

私たちが直接手にしたり体験する商品・サービスとはひとつふたつ隔てたところにある業界ですので、特別なことでもない限りスポットライトは浴びることは稀です。

ただ、いずれの産業も生活に及ぼす影響は大きいです。

例えば半導体産業なしには、車も家電も電力供給も今日び成り立ちません。

日用品も食料も、海運業界なしには手に入らないものばかりでしょう。

こうした業界にフォーカスし、書き切ることができれば、世界の表層ではなく構造の理解にも繋がります。

本としての深度も深まり、ベスト本に選ばれやすくなるのも納得です。

現在進行形の中国、失敗・失態を振り返る欧米

17冊中4冊が、特定の企業に注目しました。

タイトル企業
Flying Blind米国ボーイング
Influence Empire中国テンセント
Money MenドイツWirecard
Power Failure米国GE

どの業界の企業がどういった観点で取り上げられているかに関し、欧米と中国で差が見られます。

どういう違い?

mano

欧米企業に対しては「何を誤ったか?」が問われているのに対し、中国については「いま何が起こっているのか?」が焦点であるとの印象を受けました。

中国で扱われているのはテンセントです。テック企業で、時価総額は国内最大。そんな企業がどのような企業かを描いたのが『Influence Empire』。

一方でボーイングとGEは米国の伝統的な大企業です。『Flying Blind』のテーマはボーイング737MAXの不祥事。『Power Failure』はGEの企業史でありつつ、その衰退が大きなテーマとなるのは不可避でしょう。

ドイツのWirecardは、一時はDAX指数(ドイツの優良株で構成)にも採用されたフィンテック企業ですが、不正会計事件を起こし、破綻しました。『Money Men』はそんな不正会計疑惑を追い続けた記者による著作です。

中国・欧米の4企業を伝統企業vsテック企業、全体像vs不祥事・衰退に分類

中国に関しては、最大手企業の全体像すら未だ掴みかねている――それが英語圏の実態ではないでしょうか。

一方で欧米企業については、いまさらGAFAを特集しても、というところ(最近のビッグテックの不調はいずれ取り上げられるでしょうが)。かといって新たな大物が出現しているわけでもない。20世紀の経済史本『Slouching Towards Utopia』が出版されたように、振り返りのタイミングなのかもしれません。

なお、ボーイング737A墜落もWirecardの不正会計もNetflixでドキュメンタリーが公開されてます。

翻訳本を待つ間、こちらを先に見るのも面白そう!

mano

『地に落ちた信頼: ボーイング737MAX墜落事故』は見ました。企業文化について考えさせられる骨太なドキュメンタリーでした。

ベストセラー × ベスト本

ベスト本は専門家が選んでいるので、必ずしも売れ筋ではありません。

でもベストセラーになるベスト本もあります。そうした本は、大衆性や読みやすさも兼ね備えていやすいのではないでしょうか。

『エコノミスト』ないし『フィナンシャル・タイムズ』が2022年のベスト本にあげた書籍の内、『ニューヨーク・タイムズ』の月別ビジネス書ランキング(トップ10)に入ったのは、3冊でした。

ベストセラーにもなったベスト本3冊

タイトル著者名テーマ
Chip WarChris Miller半導体産業
Power FailureWilliam CohanGEの盛衰
Slouching Towards UtopiaJ. Bradford DeLong20世紀の経済史

『ニューヨーク・タイムズ』のランキングということで、地域的偏りはあるでしょうが、ここから何が読み取れるでしょうか。

  • 半導体はアメリカのビジネスパーソンにとっても関心事
  • GEのアメリカにおける存在の大きさ
  • とっつきにくそうなテーマかつ分厚いのに売れる経済史本の異様さ

『Chip War』がランクインしていることからも伺える通り、半導体はアメリカの多くのビジネスパーソンにとっても関心事なのでしょう。産業ものはこれだけです。

mano

ベンチャーキャピタル史『The Power Law』が入っていないあたり、スタートアップ大国のアメリカでも、スタートアップ業界はまだ一部界隈のものなのでしょうか。

その一方で、『Power Failure』の売れぶりは、アメリカにおけるGEの存在の大きさを感じます。

意外だったのは、『Slouching Towards Utopia』。20世紀の経済史というとっつきにくそうなテーマ、624ページという分厚さなのにベストセラーになるとは、本当に余程面白いのでしょうね。

この3冊のテーマは、ベスト本の中でも、特にビジネスで話題にのぼりやすいかもしれませんね!

まとめ

この記事では、2022年に『エコノミスト』や『フィナンシャル・タイムズ』がベスト本に推したビジネス書・経済書をまとめました。

  • 『エコノミスト』と『フィナンシャル・タイムズ』が共にベストにあげた6冊
  • ベスト本から見られる傾向
  • ベストセラーにもなっているベスト本3冊
  • ベスト本と同様のテーマで、日本語で今も楽しめる本やドキュメンタリー

面白そうな本がたくさん出版されてますね!

どれから手をつけようか迷ってしまいます。

この記事が、皆さんの次に読む本の選択や、これから張る情報収集アンテナの一助となれば幸いです。

おことわり

1年だけ見て傾向とか言うのおかしくない? こじつけでは?

本も未読だし……

mano

その通りです……。とはいえ各書のクオリティは確かだと思うので、manoの私見は割り引いてご容赦いただけると幸いです……。

参考サイト・記事・映像

全体

『Butler to the World』

『Chip War』

『Dead in the Water』

『Power Failure』

『Slouching Towards Utopia』

『The Power Law』

その他

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